Heaven from 3cm above
2001年11月21日
蝶のような

いつも使っているカバンの底に金粉のようなものがたまっている。
直径3mmくらいの平らなさらさらした粉。
何だろう。何かがこぼれたのだろうか。
カバンを逆さにしてその原因を探る。
何もそれらしき正体の元は見つからない。
ノートも、手帳もキラキラしている。
金粉を庭にまいて、その場を通過した。

次の日の夜、カバンを覗くとやはり金粉。
えええええ。
何も見つからない。
金粉はサラサラと庭に舞う。
そんなことが幾夜も続いた。
金色の蝶の金粉が夜な夜なカバンから溢れ出る。
その姿はきっと優美で、このカバンからつながっている別の世界から
微かなしるしのようなものを見せてくれているとしたら。

妹が言った。
「化粧ポーチの中の、それじゃないの?」
「え?」
「それ。」
メッシュの化粧ポーチから取り出したのは、薔薇の匂い袋。
手にとっても何ともない。小さな封筒状のものだ。
振ってみると、脇からキラキラと金粉が舞った。
「うはー、これだったのかあ。」
蝶を呼ぶかもしれない花の香だったのね。
カバンの中を少しずつ、少しずつ金色に染めつつあったその匂い袋。
もうほとんど空だ。
いつか匂いがなくなることを知りつつも、決して開かれることもない
その封を、忘れかけていた頃だった。

最後の金色のかけらたちを、庭にまいた。
還れるものならば土に還って眠って欲しい。
夜の闇に、蝶のような遊覧を描いてから窓を閉めた。

舎長 明神慈