2003年09月15日
大切な人から手紙が届いた。
藍色のインキが私の新しい住所を綴っている。
懐かしい筆跡。封を切る。
力の抜けたペン先がするすると動いたようで。
私の中にするすると入ってくる。
二枚目の最後の行辺りで、あなたの意識が止まったので
私も 立ち止まってしまった。
あなたはことばを慎重に選んで 心のドアを閉ざしてしまった。
三枚目からは、時間をおいて書き始めたのだろう。
あなたは素直な心のままに、涙をこぼしたことを綴っている。
「言葉では表せません」
・・・それを人は何と呼ぶのだろう。
鳥や花は知っているのだろうか。
私があなたに送った手紙は、あなたの鏡となり
私が受け取ったあなたからの手紙は、大切な大切な標となった。
この手紙さえあれば、どこまでも歩いてゆけるくらいに。
あなたの涙が、自分を責めているからなのか
見えない大きな流れのようなものに気付いてしまったからなのか
それとも、長い長い眠りから目覚めたからなのか
私には分からない。
あなたの眼を見ているわけではないから。
嘘がつけないあなたの。嘘なんてつきたくもなかったあなたの。
あなたは私を鏡にしているから、鏡に映る自分を見つめているのですよ。
私を見つめる無邪気さをいつしか忘れてしまったあなた。
すべての人を、そうやって見つめているかもしれないあなた。
手紙は三枚目の真ん中で体勢を立て直し、あなたは再び私を溶かし、
五枚目の真ん中で筆を置いた。
ある友人が言った。
「七回読むと自分のものになるわ」
叶うなら、あなたが涙でしか描けない、その「何か」を私は知りたい。
いいえ。あなたの涙に私も濡れたい。
すべてが流れて、溶けだしてしまったら
次の場所へ行けそうな気がするから。
大切な大切なあなたへ。
舎長 明神慈