高知新聞「オペラグラス」
2007年11月17日 夕刊
竹内一
「夜の底への誘い」
県立美術館の中庭、回廊、展示室を演劇舞台にして、「ポかリン記憶舎」の公演
「和服美女空間『夜奏』」が繰り広げられた。
これまで同館では水を張った中庭を効果的に使った中島諒人演出の演劇
『ヘッダ・ガブラー』などがあったが、『夜奏』は建物の魅力をさらに生かした公演だった。
夜の美術館を訪れた鑑賞者は「和服美女」の案内で受付ロビーから、中庭へと案内される。
そこには市民とのワークショップで作られた竹のオブジェが飾られている。
もうここから「和服美女空間」は始まっているのだろう。
鑑賞者はまず中庭を見渡せる回廊に置かれたいすに着席する。そしてガラスを隔てて、
中庭で繰り広げられる演劇を鑑賞することになる。
幻想的にライトアップされた中庭に、和服というよりは、古代の衣装のようにも見える
衣装をまとった女性たちが静かに現れ、そろりそろり歩きだす。ガラス越しに眺めていることが、
夢幻の世界へのいっそうの誘いとなる。そして女性たちは中庭から回廊へと進み、
鑑賞者のすぐ目の前を歩いていく。
演劇の前半はここで終えて、鑑賞者は展示室へ移動する。
舞台は一転して閉じられた空間になる。衣装に触れんばかりの近さで、そぞろ歩きのような、
そのパフォーマンスは静かに展開していった。
劇団を主宰する高知市出身の明神慈は、今回の公演を「夜の底の物語」と表現した。
確かにそれは、夜の美術館という舞台装置と和服美女を使い、まるでエレベーターに乗せられて、
どこか深い深い場所へ連れて行かれるような体験だった。